最近の読書

 春日太一著『鬼才 五社英雄の生涯』読みました。
 五社英雄という監督の豪胆さと、同時に透けて見える気の弱さ(を隠そうとする姿)の二面がよくわかって面白かった! 終盤は切ないなあ。
 
 五社監督というとすごく印象に残ってるのが、遺作になった『女殺油地獄』のノミネートで確か日本アカデミー賞のテレビ中継だったと思うんだけど、藤谷美和子助演女優賞の時だったかな、司会の人が「入院中の五社監督から手紙が届いています」とか言って、山城新伍だったか徳光アナだったか忘れたけど、その手紙をその場で代読したのです。それは会場の人に向けたメッセージで、
「どうぞこの映画を褒めてやってください」
ということを繰り返し言っていたのでした。

 これが自分の遺作になるであろうから、という前段があったようななかったような‥‥、ともかく病床から「どうぞ褒めてやってください」と手を合わせるような手紙なのでした。

 私はそれをテレビで見ていて、うわ〜〜〜‥‥ となりました。
 あの豪放磊落なイメージの五社監督がそんな弱々しい姿を見せることがショックでもあったし、まだただの若造だった私としては、公の場で褒めて下さいなどと言うなんてプロの表現者としてどうなんだ‥‥とも思ったし、でも強気の鎧を脱いだ男の正直な願いだとも思ったし、五社監督死んじゃうのかよ‥‥とも思って、正直特に五社ファンってわけではなかった私ですが(と言いつつ結構見てたんだよな〜)、なんだかとにかく重く悲しかったのでした。

 この本でもその件について言及してるかなと思ったんだけど、残念ながらそれには触れていませんでした。
 でも本書を読むと、あの手紙は本心の吐露だったのか、或いはあれすらも五社流のハッタリのひとつだったのかわからなくなってきます。
 どっちだったんかなー。

 ともかく面白かったんで、2014年刊のKAWADE夢ムック「五社英雄 極彩色のエンターテイナー」も買いました。

 ちなみに、そんなこともあってか私は『女殺油地獄』は見てないままです。


 あと文庫化された『不死蝶 岸田森』(小幡貴一 田辺友貴・編)も買いました。
 昔、阿佐ヶ谷にあるミニシアター、ラピュタ阿佐ヶ谷のロビーでこれの単行本を本棚に見つけて、読みたいなと思っていたのでした。
 享年四十三って、若すぎるよなあ。