何年前だったか、アシスタントに来てくれた人が「面白かった」と教えてくれて、読んでみたら本当にめちゃめちゃ面白かった一冊。
久々に読み返してみましたが、『生きる』や『七人の侍』などのシナリオの制作秘話も面白いんですが、さすが巨匠と言う他ないような創作に対する啓示に満ちた力強い文章にまず圧倒されます。いろんな場面が、これ本当なの?と思うほどやたらとドラマチックです。
『七人の侍』を書き終えた後に、
「余裕のある仕事からはなにも生まれない」
などと言われたらもうこっちは、そ、その通りです‥‥とひれ伏すしかありません。
なにかと濃ゆい巨匠な人しか出てこないので、かなり胸焼けもします。
今、東京渋谷の初台駅に新国立劇場・東京オペラシティがありますが、あの場所に国立の映画劇場と(こちらは場所は定かではないが)国立の撮影所を作るという案があって、橋本氏がその実現に奔走していたという話がエピローグで語られます。結局頓挫して今のオペラシティが出来るわけですが、それを病床の菊島隆三氏に語る場面は異様な迫力で胸に迫ります。
『幻の湖』を1982年の公開時に新宿で観たのが私の自慢と言えば自慢かも。
『八つ墓村』(1977年)をオカルト的に再構成したのは、のちに原作を読んだ時、これをああ料理したのかと唸りました。すごいと思った。
- 作者: 橋本忍
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/03/01
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