クレッターじいさん

 うちの近所の八百屋に、いつも「あい、いらっちゃい、いらっちゃい!」と言う気のいいおっさんがいます。通る度に「いらっちゃい!」が聞こえるのでちょっと楽しかったりしてました。
 『しずかの山』のナンガ・パルバット編でゲリラの中にクレッターじいさんというキャラクターが出てきますが、このじいさんを描く時に、
「あ、あの八百屋のおっさんにしよう」と思って、顔は違いますが喋り方など勝手にモデルにさせてもらいました。

 主人公高遠を見てじいさんが「おや、いらっちゃい」と言うネームを描いて一人でニヤニヤ。でも編集さんに書き間違いと思われて、
「いや、『しゃい』じゃなくて『ちゃい』でいいんです!」と説明して、無事あのクレッターじいさんとなりました。

 以来、八百屋のおっさんのことを密かにクレッターと呼んでます。
 今日もクレッターの八百屋でグレープフルーツ買いました。
 もちろんクレッター本人はクレッターだと知る由もありません。
 
 じいさんが死ぬ場面を描いた後にクレッターのとこ行った時は、素知らぬ顔で買い物しながら「殺してごめんね」と心の中で手を合わせて謝ったものでした。

 実際あそこは描いてて心が痛んだなあ。