冬の蜃気楼

 山田太一『冬の蜃気楼』を読みました。小説です。
 後半、残酷な結末が待ってる匂いがプンプンして、読み進めるのがちょっと辛かった。読みたいけど読みたくないよーっていう。なんか次の展開来るぞ、ってところでちょっと時間を置いて、ダメージを受けないように悪い結末を前もって相当多めに予想して心の防御をしつつ読みました。本当は超ハラハラしてるんだけど、さほど関心ないけど〜、みたいに平静を装って読むという態度で乗り切りました。
 読み終わって、何か胸に棘が刺さったままのようなモヤモヤした感じです。悪いモヤモヤじゃないんです。やられた。けど、鮮やかに、やられたっ! ていうのとも違う、なんとも言えない感触です。あんだけ防御してたのに予想と違うところへ連れて行かれましたよ。
 面白かったです。

 心理を的確な言葉で表現する文章を書けるってすごいな、しかし。

 『シャツの店』のあと『異人たちとの夏』を読んで、これ読んで、全部面白かった。山田太一祭りが始まっている。
   
    

冬の蜃気楼 (小学館文庫)

冬の蜃気楼 (小学館文庫)

読んだのは新潮文庫版だけど、今年再文庫化された小学館版はかなり加筆修正がされてるらしい。こっちも読みたいな。